彼岸花の恋

※ 会話のスタイルは「バランス」選択。

彼は彼女が好きだった。黒髪に白い肌、細い眉と大きな瞳が、彼の目に焼きついていた。

二人は同じ学校に通っていたが、クラスは違っていた。彼は彼女に話しかける勇気がなくて、遠くから見つめるだけだった。

ある日、放課後に図書室で本を借りようとしたとき、偶然にも彼女と出会った。彼女も本を借りようとしていたらしく、手に持っていた本の表紙には「彼岸花」という文字があった。

「あ、その本…」

「え？」

「すみません、僕もその本を読みたかったんです」

「あ、そうなんですか…」

「もしよかったら…一緒に読みませんか？」

「一緒に…？」

「ええと…僕も彼岸花が好きでして…」

「私もです！」

二人は目を見合わせて笑った。そして図書室の隅で、本を開いて読み始めた。

それから毎日、放課後に図書室で会っては本を読んだり話したりするようになった。二人の仲はどんどん深まっていった。

やがて秋も深まり、学校の近くの田んぼにも彼岸花が咲き始めた。二人は放課後に田んぼ道を歩いて帰ることにした。

「この辺りでは珍しいですね、こんなに沢山咲いてるの」

「そうですね。でも綺麗ですよね」

「うん。でもちょっと寂しい感じもします」

「どうして？」

「だって…彼岸花は一人で咲くから…他の花と仲良くできないから…」

「そうかな？でも僕は違うと思うよ。彼岸花は一人で咲くからこそ強くて美しいんだよ。他の花と違って自分らしく生きてるんだよ」

「自分らしく…？」

「そうだよ。君もそうじゃないか？他の人と同じじゃなくて自分らしく生きてるよね。それが僕は好きなんだよ」

「好き…？」

彼女は驚いて顔を上げた。すると目の前に彼の顔が迫ってきた。

キスされる寸前で、

カシャッ

カメラのシャッター音がした。

振り向くと、

クラスメイト数人がニヤニヤしながら写真を撮っている姿が見えた。

「やっべー！撮れちゃった！これ明日学校中に広まるわ！」

「マジか！すごいな！二人とも彼岸花好きだったんだ！」

「なんでここにいるんだよ！消えろよ！」

彼は怒ってクラスメイトたちを追い払った。彼女は顔を赤くしてうつむいた。

「ごめんね…こんなことになって…」

「大丈夫だよ…気にしないで…」

「でも…あの写真…」

「大丈夫だって。僕が何とかするから」

彼は彼女の手を握って笑った。彼女も少し笑った。

「ありがとう…」

二人は再び目を見合わせて、今度はしっかりとキスした。

その後、学校では二人の写真が拡散されて、色々な噂が立った。しかし、二人は気にせずに仲良くしていた。図書室や田んぼ道で会っては本を読んだり話したりキスしたりすることが日課になった。

やがて冬が来て、彼岸花も枯れてしまった。しかし、二人の恋は枯れることなく、次の春も咲き続けた。

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以上！